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僕は自分のベッドで寝ていたはずなのに、気が付くと薄暗いトンネルの中を歩いていました。
出口も入口も闇に溶け込んで全く見えない。前も後ろも見渡す限り黒い世界が続いていた。
漆黒の闇の中に橙色の照明がポツポツと並び、ぼんやりと鈍い光を放っている。
その中をひたすら歩き続ける。
亀裂だらけの古びたアスファルトは些か歩き辛かった。
あれ?
僕はどこに向かって進んでいるんだろう。
携帯に目を向けると、暗闇の中に眩しくディスプレイが浮かび、思わず目をしかめた。
少し目が慣れてからもう一度覗き込むと、時刻は深夜4時35分を指していた。
なんでこんな時間にこんな場所を歩いているのだろう。
まて、ここは何処なんだ?
意識がはっきりし始めて、じわじわと恐怖心に襲われる。
現在地をGPSで確認しようと操作を続けたが、ディスプレイの左上には圏外の表示がされていた。
出口を目指して歩くしかないのか。焦燥感にかられ、自ずと早足になる。
僕はどちらの道が正しいとも解らないまま、再び歩みを始めた。
恐怖心のせいか、僕の膝はケラケラと笑っているようだ。
そうだ、恐怖を紛らす為に照明の数を数えながら進もう。
1
2
3
4
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67
68
69
……長いトンネルだな。
疲れが見え始め、僕は肩で息をしながらも足をとめずに歩き続けた。
相変わらず膝の震えはおさまっていない。
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あ、出口が見えてきた。
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