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「もう俺のこと愛してないの?」
甘え声で寛人に聞かれると、
「う…」
と返事に詰まってしまうえみ。えみは寛人を愛していた。だけど…例え自分がどんなに愛していても、それだけで家族を捨てられるほど、えみは馬鹿正直ではなかった。えみは自分で自分をしたたかな女だと思っていた。そんな自分は嫌いだった。
「その人に行けば?」
ふいに寛人が言った。
「そうだね…そうしようかな…」
負けじとえみも返した。本当の気持ちを押し殺したまま、えみは寛人から離れ、拓海へと近付こうとしていた。
もしかしたら、いや多分、寛人の気持ちと自分の気持ちを確かめたかったのだろう。そして…この愛がどれ程深く二人を繋いでいるのか、知りたかったのだ…
えみは運命の赤い糸を辿り始めた。
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