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「綾音ー、出来たぜー」
「あ、リク、ありがとう」
ガチャッと音を立てながら嬉しそうにニコニコ笑顔で部屋に入ってくる陸。
その手に持つのはお盆に乗った小さな土鍋。
ご機嫌って事は上手く出来たのかな……ふふっ。
「ほら、綾音っ、上手く出来ただろ?俺だってやればできるんだぜっ」
「わぁっ、本当だ」
陸の手によってパカリと開いた土鍋には黄色くてフワフワした卵とツヤツヤした白米の卵粥。
「……美味しそう」
「だろっ!?ほら、綾音っ、早く食べてみてくれよ」
器に、お粥を少し入れてレンゲの代わりに差し出されたスプーン。
それと重なるように構ってくれと言わんばかりの犬を彷彿とさせるようなキラキラした瞳で私を見つめてくる陸。
そんな陸が可愛くて私は、ふふっと笑いを零しながらも、お粥を頂く事に。
――もぐ、
「……美味しい」
「……マジで」
「ん、マジで」
「……っ、よっしゃあっ!ホラ綾音もっと食えよ!!」
「うん、あ」
「ん?どーかした?」
「リクの分は?」
「あー……俺は、いい」
「……え?」
「――味見、したから」
「味見したって……リク、アンタもしかして」
「いや、味見したら結構美味くて……その……」
「普通に食べちゃってお腹いっぱい――と?」
「その通り、です」
「……マジですか」
うわー、なんていうか。
「………………」
「あ、綾音?」
下を向いて黙り込んでる私が怒っているのかと思っているのかワタワタとしながら私の名前を呼ぶ陸。
あー……うん、なんか、もう限界かも……うん、ごめん。
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