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「じゃあ俺、お粥でも作ってくるわ」
「ああ、そう言えば朝御飯まだだったもんね」
「綾音も腹減っただろ?いつも綾音が作ってくれてるから、たまには俺が作ってやるよ」
「本当に!?……あ、でも」
「ん?」
「リクって料理できたっけ?」
「…………多分」
「えっ、ちょ、何その間は」
俺の思わぬ言葉に嬉しそうに目を輝かせる綾音だったけど、綾音からの料理出来たっけの問い掛けに視線を逸らした俺を見て、どうやら微妙に危機感と焦りを感じたらしい。
ま、当然……か?
「しょ、しょうがないだろっ!?今まで作った事無いんだから。あ、でも作った事は無くても作るのを見てたから作れると思うぜ」
「……何その理屈は」
「……や、なんとなく」
「…………」
「……悪い」
「あ、別に考え込んでただけで、怒ってる訳じゃないから謝らないで良いよ」
「あー、そっか」
急に黙り込んでたから怒ってんのかと思った。
「まぁ、とりあえず任せろ」
「うん、じゃあ今回は、お願いしちゃおうかな……期待しないで待ってまーす」
「……おいおい、期待しての間違いじゃねぇのかよ」
「うん、期待しないでー……で、合ってるもん」
「……あ、そう」
せっかく初めて作るんだから期待されたかったと思うのは俺の我儘なのか?
う~ん、
考え込むように力無く、うなだれる様子の俺。
そんな俺に、
「嘘だよ~、期待してるよリク」
そう笑って綾音が言うから俺は、なんだか嬉しくなって
「おーしっ、任せとけっ」
そう言ってニッと綾音に笑い掛けたんだ。
(キミの笑顔は俺を何百倍の幸せと喜びをくれるんだ――…)
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