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ビルの間で俺の足音が反響して、やたらと大きな音を立てている。
この世界には俺の鼓動音と足音のみしかないのか。
それとも俺の耳がおかしくなっているのか。
二種類の音しか無い世界は、余計に俺を焦らせる。
しかし、捕まる訳にはいかない。
今日こそはこの夢から逃げ切って見せる。
ハ ァ …
ハ ァ …
ハ ァ …
もつれる脚を必死に動かし走る。
ほんの数十メートルの距離がやけに長い。
やっとの思いでビルの間を駆け抜けると通行人も疎らな通りへ出た。
僅かではあるが通行人が居るという状況に少し安堵する。
人が居る場所では流石に何も出来ないだろう…。
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