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そんなある日
城に秀吉が帰って来た
それを察知した半兵衛は
無理を押して病床から起き上がり
女官から化粧を施されて
傍目には元気そうな姿で
秀吉を出迎える
「息災か…?半兵衛…」
「うん…おかえり…秀吉」
「病の塩梅はどうだ」
「別に何とも無いよ…」
そういって半兵衛は
ふと言葉の最後に
呼吸の乱れを感じた
(しまった!)
「ん…?少し呼吸が乱れてるようだが」
「き…気のせいだよ」
乱れはさらに大きくなる
「俺の目は…ごまかせんぞ…半兵衛」
心臓の鼓動まで乱れて来る
「ははっ…ほらみて平気だよ」
半兵衛は立ち上がって
秀吉の前で幸若を舞おうとする
その時
バタッ
「半兵衛!半兵衛!」
秀吉は半兵衛に駆け寄り
抱き上げる
化粧の施されていない首筋から
大量の汗が流れ出る
「ははっ…やっぱり秀吉にはかなわないな…」
「しゃべるな!半兵衛!」
「君の…足手まといに…なりたくないから…」
ガクッ
そう言うと半兵衛は事切れた
「半兵衛!はんべ~えっ!」
悲しげな秀吉の叫びと慟哭が
巨大な城全体に響き渡った
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