Sacrifice-妹と私-。

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      ー妹が生まれました。     母のお腹が大きくなり、今か今かと待ちわびた出産。 生まれたのは女の子。 「やったねお母さん!おめでとう!!」 義父は母が身ごもったことを知り消滅。 結果的に今まで二人で暮らしてきた。 母は自分を棄てた義父を恨んではおらず、 ーいつか必ず帰ってくるよ… そういって過ごしていた。 私も母が子供を生めば義父は帰ってきてくれる、そう有り得ないとわかりつつも信じていた。 「可愛いね…指握ってくれるよ!!」 「そうね…あなたは今日から"お姉ちゃん"ね」 "お姉ちゃん" その響きが妙にくすぐったくて、頬が緩んだ。 母も私も待ち望んだ子。 周りの大人も待ちわびた出産。 妹は誰からも望まれ、祝福を受けた子。 「神様に愛されて生まれてきてからも愛されて、本当にこの子は幸せですね」 看護婦さんの一言が妙に印象的だったその日から早8年。 妹は村でも有名な美人に育った。 「お姉ちゃん髪の毛縛って」 「はいはい、今やったげるね」 妹は私を一番慕ってくれた。 お姉ちゃんお姉ちゃんと、良く懐いてくれた。 自慢の妹で、そんな妹が誰より自分に懐いてくれてるという事実が嬉しかった。 「ねぇお姉ちゃん」 「なぁに?」 「どうしてお姉ちゃんと私、似てないの?」 櫛でとかす手が止まる。 妹は人形みたく整っていて、美しい金髪は緩く癖がついている。 私はお世辞にも可愛いとは言えない顔で、髪の毛はストレート。 私達が姉妹だと告げると、誰もが驚いた。 「ー知らなかったっけ?私と貴女はお父さんが違うのよ」 「お父さん…?」 私の父は私が生まれて直ぐ事故で死んだ。 女手ひとつで私を育てる母に惹かれたのが妹の父である私の義父。 母と私は養えても流石に妹まで面倒は見切れないと、私達を棄て蒸発してしまったのだ。 妹は義父の顔を全く知らないで生きてきたから、"父親"という生き物を知らなかった。 「いい?子供というものは、男と女が交わることで生まれるの」 「…まじわる?」 「あー…えっとね?要するに…裸で抱き合うの」 「抱き合うだけで赤ちゃん出来るの?」 「…だからね?セッー」 苛々した私がその単語を出す前にごん…、という鈍い音と共に頭に鈍痛が走った。    
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