中野 誠司の場合

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ブラックアウトしていた ディスプレイを もう一度ログオンする。 いつの間に寝ていたのか、 チャットの途中で 寝落ちしていたようだ。 ディスプレイには、 『弓月さん寝落ちかな?』 という一言が出ており、 そこを境に 僕はすっかり話から 切り離されていた。 外はもう すっかり明け切っていて、 通学中の小学生の声さえ 聞こえない。 今日もサボり決定か・・・。 時計を見つめて 短くため息を吐き、 ダメ人間に近づく自分を 嘲笑した。 呆けたままの自分を残して、 世界が自転を続けている。 すべては自分の目の前を、 含み笑いさえ浮かべながら 通り過ぎていく。 そうやって、 昼近くまでの 数時間を喰べ尽くし、 もう一度ディスプレイと 眼を合わせた。 『ちょっちさん、 昨日はごめんなさい。 寝落ちしちゃいました』 あの後続いた話の内容を 確認してから、 寸前まで話していた相手に 謝罪文を書いた。 意外にも、 数分後に返信があり、 『お疲れ』 という言葉に救われた。
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