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──── 「結くん、急いで~。置いてっちゃうよ~」 「あと三十秒っ」 玄関から聞こえた詩姫姉の声にそう答えつつ、顔を洗ってびしょ濡れになった顔をタオルで拭く。 鏡で見える俺は至って普通の中学──今日から高校生か……まあ、至って普通の高校生男児だ。 染めたことのないやや茶色掛かった黒髪、特徴といえばこれかな? 髪に隠れる左目。俺の左目は虹彩かなんかの異常で黄色い。それだけが俺の特徴かな? 拭き終えると同時に壁に立て掛けておいたカバンを手に持ち、玄関へ急いだ。 「遅いよ~」 「三十秒以内には来ただろ」 きっちりと扉に施錠し、学校へと歩きだした。
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