第1話 “勇者”の事情

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――――「はぁ、はぁ………強い、強すぎる!」 「さすがでござるな………“勇者”の称号は伊達じゃない。」  カケルとギンは息を切らして背中合わせに座った。 ホコリが舞う戦場に、“勇者”の強さを直に感じていた。 穏やかな紳士の声が響く。 「ハッハッハ。君達の実力はそんなものかい? カケル君。ギン君。」 余裕たっぷりの“勇者”の声に腹を立てるカケル。 「くそっ!―――でも今行ったら間違いなく返り討ちだッ!!」 「カケル殿………。」 神妙な面持ちでギンが呟く。 「どうした?ギン」 「拙者………カケル殿に出会えて、本当に良かったでござる。」 ギンは力無く微笑む。 カケルの頭には嫌な予感がよぎった。 「おい………早まるな!!ギン!二人で勝とう!この戦い!」 「無理でござる………。 拙者が突っ込むでござる。隙を作るから………後はカケル殿に任せたでござるよ。」 「嘘だろ………。お前が犠牲になるってコトかよ!!」 「話し合いは終わったかね?諸君。」  “勇者”の声が再び。 ギンは力強い瞳でカケルを見ると、 勢い良く“勇者”に向かい飛込んだ。
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