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「…龍夜……僕…どうしよう…龍夜ぁ…」
裕兎の震えた声が、冷たい地下室に響く。
泣きそうになりながら少しパニックになっている裕兎とは裏腹に、俺は驚くほど冷静だった。
自分でも、おかしいんじゃないかと思う。
「大丈夫だ」
俺がつぶやいた言葉が、冷たいコンクリートを伝う。
「行こう」
「え…龍夜…?」
俺は真っ赤になった鉄の臭いがする裕兎の手を取った。
そして床に横たわるそれを一瞥してから、前に向き直る。
胸に包丁が刺さったままの兄貴を置いて、俺達は走り出した。
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