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俺は将吾さんの真似をして言ってみた
「ああ、お前にも適当な事はしてほしくないんだ」
この台詞じみた言葉は昔、大将に…正確には俺と大将に向けられた言葉かもしれないけど
―将吾さんが言った言葉と同じだ
「…出会いじゃなくても良いんだよな?」
俺は言いたくは無かったけどその言葉を口にする
父さんの事は大将にもあまり話さない
なんだか俺たちの間では話題にしちゃいけない感じだ
「ん…ああ、別れでもいいって言ってたよな?」
確認するみたいに言ってくる
それに俺は軽く頷くと大将が続ける
「じゃあ別れについて書くの?」
「…父さんの事を書こうかと思ってさ」
俺は言って少し後悔する
父さんの事は覚えてないけど死んでしまったのは知っている
当然父親はいないからその事で気を使われたりいじめられたり…
俺はこの話を無意識に嫌っていた事に何となく気づく
「そっか…」
それだけ言うと帰り道を二人で歩きだす
さっきみたいに無言だ
「なあ千景?」
大将が口を開く
「んー?」
俺は適当な返事をする
「…やっぱりいいや、じゃな」
軽く手を挙げると大将は自宅の方へと走っていった
いつもは何か家の用事がない限りはうちまで少し遠回りして帰る
土曜日なんかはお互いの家に行って昼ご飯を一緒に食べたりもするしこんな別れ方をしたのは珍しい…
俺は大将を見送ると家に向かって歩く
ここから家まではすぐで五分とかからない
気がつけば家の前まできていた
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