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「わ~、可愛いねぇ」なんて女子のキャピキャピした声や「お前馬鹿じゃねぇの~?」って男子の声やら、あいつの周りには自然と人が集まっていた。
「あいつってさ、本当に男女問わずモテモテだよなぁ」
親友があいつの様子を見ながら、呟く。
「あんだけ外面良けりゃあモテるだろ」
親友にそう告げて、俺はひたすらペンを走らせた。
親友の宿題を丸写しするという作業に集中してるふりをして、内心は後ろを気にしてる。
気づいたらあいつに惚れていた。
だから、逆に興味がないふりをする。
ホモじゃなかったはずなのに、男を好きになったなんてあまりにもバカバカしい。
生粋のノーマルのあいつが、俺の気持ちを受け入れるはずもない。
「お前冷めてんだねぇ。あ、あいつがこっちにきた」
あいつは社交的なやつだ。クラス全員にでも声をかけるつもりなのか。
「なぁ、Trick or treat♪」
俺の肩を叩いたあいつは、そうにこやかに言ってきた。
「菓子なんかねぇよ」
甘い物が好きな俺は、机の中に本当はいつも飴を入れている。
でも、あえてそう答えた。
「残念だなぁ。お菓子欲しかったのに」
ちっとも残念そうに感じない言い方をする奴だ。
そんな奴に、俺はむしろ言いたくなった。
「なぁ、俺からも言っていい?」
「ん? 何を?」
キョトンとする顔に向かって、俺はニヤリと言った。
「Kiss or treat. 本気で言ってんだからな?」
ハロウィンにかけた告白。
お前は一体どう返す?
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