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ガラガラガラ・・・。
このご時世に聞きなれない扉の音が家の廊下に響いた。まるで昭和の香りを感じさせる引き戸のしかも木造で一階しかない小さな家と、それに不釣り合いな大きい目の庭が少々アンバランスだ。
扉を開けたのも建物の外観に不釣合いな少女だった。彼女は黒色のスカートにいたって普通のセーラー的な高校の制服を着てその上からカーディガンを羽織っていて、足元は紺のハイソックスにローファーを履いている。
引き戸の先には特に何があるでもなく普通の玄関口だった。
「りょー君?入るよー?」
大きな声は廊下を吹き抜けていく風に乗って家中に流れていった。返事はまるで当然の如く無く、拒むでもなく普通の沈黙だけが帰ってくる。それを確認すると、たいして高くもない敷居をまたぐ、亜衣はまるで自分の家に入っていくような慣れた感じで家に入っていく。
ちなみに、ここは彼女の家ではない。
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