その男、和見 充。

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某壱県双毛市。 双毛駅から徒歩で片道二時間。 車で片道十五分。 バスは一時間に一本。 コンビニは、大学から片道徒歩五分の場所にある某店のみ。 他のコンビニに行こうと思ったら、徒歩では片道四十五分はかかるだろう。 そんな辺鄙な場所に芦院大学とその大学院はある。 この大学は元々、女子大であったのを共学にしたため、男子学生よりも女子学生が多く入学してくる。 周りは田んぼや、建設業の加工場などで囲まれ、背後には大きな山がある。 実に自然というものと隣り合わせだ。 背後の山からは、春先になると狸なのか猪なのかよくわからない動物が現れてグラウンドに足跡を残していく。 大学には、ATMは無く、ロッカーも無い。 ATMが無いために、急な出費…例えば、講座料や証書発行手数料など…のときには車を持っている人物に頼んで、片道十分かけて、全ての銀行のATMが揃うショッピングセンターへ行って、現金を下ろしてこなければならない。 ロッカーが無いため、一時期、置き引きが多発… そんな大学だ。 そして、入学した学歴コンプレックスに陥りやすい人物たちはそういったことでもいちいちブルーになりやすくなる。
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