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耳に届く何かをかき混ぜる音。
時折、微かにぶつかる不協和音の音も混じっていることに私は気づいた。
ゆっくり目蓋を上げると、薄暗い天井が見えてきて……。
その瞬間、私の心が恐怖で埋めつくされていく。
もしかして、研究者達に捕まったのかもしれない。
蘇る日々の辛さが心を支配し、私は体を勢いよく持ち上げ、威嚇するように叫び声を上げた。
「あぁぁぁっ!」
言葉を知らない私は、喉を震わせながら叫ぶことしか出来なくて。
それに驚いて振り向こうとするやや小ぶりな背中は、何かを思い出したかのように振り向くのをやめたのだった。
「お前は『メデューサの瞳研究所』の者であろう? しかも、『コードナンバー013』……」
何を言ってるのかわからなくて、唸り声を上げ続けて。
でも、無理しすぎたせいか咳込んでしまって。
口に手をあてて、咳が止まるのを待とうとして、不意に気づくこと……。
私の腕に真っ白な包帯が巻かれていたのだ。
管を刺されていた私の腕は穴だらけだった。
それを包み隠すように、優しく巻かれた包帯……。
私はそれを食い入るように見つめてしまった。
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