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「何て謝ればいいのかわからないが……。お前さんには苦労をかけた……。わしらみたいな自分勝手な考えで、君に辛い思いをさせてしまったことを深く反省をしている……」
低く優しい声が、私を宥めるように話しかけてくれて。
何かを決意したように、振り返ろうとする。
不意に頭に過る研究所の石像達。
全てこちらを向いていたことを思い出すと、私は慌てて顔を両手で覆い隠した。
恐らく、研究者達は私の何かを見て、石になった。
そう思えて、両手で隠せる部分である顔を隠したのだ。
足音が徐々に近づいて来る……。
身をよじらせて、足元にある布で体を隠す。
何も見ないように。
見せないように。
しかし、何かを置いた音の少し後、優しく手首を握られて、覆い隠していた顔を晒される……。
目を固く閉ざした私。
見られたくない……。
私がどんな醜い形を知らないから。
見られたくない……。
私の体にどんな秘密があるのかわからないから。
そんな葛藤がある私を癒すように、頭に手を当てられる。
初めて感じた温もりに驚き、目を開く。
その先には初老の男性の姿があって、優しく微笑みかけてくれた。
しかし、目が合った瞬間、男性の顔が微かに歪む。
眉間にシワがより、歯を食い縛るのがわかる。
微かに上げる唸り声が、私には苦しそうに聞こえたのだ。
「あ……、あぁ……」
「ごめんなさい」と謝る言葉を知らない私は、ただ罪悪感に囚われた。
だって、私を見ただけで苦しそうな顔をしたのだから、私のせいなのは明らかだったから……。
「だ、大丈夫だ……! どうやら、お前の能力は感情に左右されるようだな。体は動かないが、口と首は動かせる……」
「あぁぁ……?」
そのときだけは、何を言ってるのかわかった気がして。
胸が熱くなるのと同時に、私の目をから何かが溢れて出した。
「泣いているのか? 可哀想に……。涙すら石になってしまうとは……」
掌で溢れてくる物を受けていく。
小さな粒が掌に降り注いで、やがて、掌から零れ落ちる……。
コロコロと私を覆う布に落ち、鈍く輝いて見せる。
私の涙は、無色の石ころ……。
初めは気にならなかったが、後に私が普通じゃないことがわかり始めたのだった……――
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