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小さな私の部屋に飾られた三十一まで書かれた紙。
本を横向きにしたような不思議な物体を私が眺めているときだった。
ドアがノックされると、少し間を置いておじいちゃんが現れる。
台車にティーカップと二枚のビスケット。
私から視線を逸らしながら、微笑みかける。
台車をベッドの横につけると、後ろから私の頭に手を乗せてくれた。
「これはカレンダーと言ってな。人間界で使われているのを天界でも使わせてもらってるんだよ」
「カレンダー……。天界と人間界は違うの? 私とおじいちゃんがいるのはどっち?」
「わしらは天界じゃ。人間界とはまた別の世界」
「ふーん。本の世界と私とおじいちゃんがいる世界みたいな感じ?」
「まぁ、そんなものだ!」
大きく笑い声を上げるおじいちゃん。
私はおじいちゃんが笑ったことが嬉しくて、つられて笑ってた。
笑える日が来るなんて思わなかった。
カプセルの中で見た研究者達を怨み続けるだけしか感情がなかった私が、今は笑っていられる。
いつか、おじいちゃんと何の抵抗もなく目を合わせて話したい……。
そんな夢すら、私の指の隙間から落ちていった……。
細かい砂のように。
サラサラと。
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