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次第に足場が悪くなり、足の痛みを感じて初めて足を止めていた。
周りを見渡すと、そこには絵本に描いてあるより大きな木々がところ狭しと並んでいた。
複数伸びる手に、小さくて影越しでも新緑とわかる葉を備える大きな木の群れ。
本で読んだ通りなら、これが林か森なのだろうと思うと感嘆の声が自然と漏れてしまう。
今度はゆっくり歩きながら森を探索していく……。
葉の間から溢れる光を辿りながら歩くのが私には楽しかった。
足元を見れば、痛みの原因がわかって……。
私の涙のような小石が複雑に、しかし、個々を主張するかのように光って見せて。
その場で屈むと、綺麗な小石を拾いあげてみる。
小さいくせに重みがあって、やけにつやつやしている石だった。
赤や緑の色がついていて、私には綺麗に見えた。
歩く度、綺麗な石や可愛らしいまるっこい石を拾いながら、私は森の深みへ進んで行くのだった。
腕一杯になった石を落ちないように歩く私。
予想以上に重い石達に気づかいながら歩いていると、耳にある音が入ってくる。
私はそれに気づくと小走りにその音を追って行った。
「わぁ」
音の正体。
それは川だった。
透明な水が高いところから流れ、飛沫を上げる。
不規則に並ぶ岩の間を縫うように、速さを変えながら流れていく川に私は感動してしまった。
拾った小石をその場に落とすと、川に向かって走っていて……。
岩々を慎重に降りて行くと、もう、目の前に川が見えてきていた。
嬉しくなって、胸の高鳴りに身を任せ川の中に入って行く。
足に水がついた瞬間の冷たさに驚いたが、私はそれを苦にせず、体を水に浸けた。
水の中と外では、音が違った……。
耳を包むように流れる水は、私に話しかけるように騒がしい。
でも、耳障りじゃなくて……。
私は目を閉じると、川の流れに身を委ねた。
手を足を髪を包みながら、私の体を流していく川の力。
これが私が生きていく世界かと思うと嬉しくなって……。
何故か、胸が熱くなった……。
頬を私の涙が溢れて、水の中を漂っていく。
本当にそうなったかわからないけど、そうだったら綺麗だなと思ったのだ。
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