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「マリア?」
「はい……」
「明日も逢いたいんだけど……」
「えっ?」
「マリアに逢いたい。今日はもう帰らなきゃいけないけど」
「でも、私……」
「来れないなら! 毎日来るから! 出られる日に来て……?」
トクンっと異常な大きさに心音が変わった……。
大輔は研究者達とは違う目で見てくれてる。
そう感じられて、顔を上げると大輔と目が合って……。
「はい……っ」
そう返事をすれば、大輔は真っ赤な顔をして嬉しそうに微笑んでくれたのだった……。
それから、大輔の微笑みが頭に焼きついて離れなくて。
頭が熱くて、何も考えられなかった。
何気なく顔を上げて見たときには、森を抜けていた。
太陽が橙色に燃えて、緑色だったはずの草木も染めて……。
あまりの美しさに見とれてしまった。
ゆっくり、一歩一歩踏みしめながらおじいちゃんと住む家に向かう。
だけど、なかなか足が前に進んでくれなくて……。
髪を後ろから引かれている感覚……。
まだ、大輔と話したかった……。
あの後、大輔は足早に川を後にしてしまった。
帰る際、手を振ってくれたのは嬉しかったけど、もっと彼を知りたかった。
明日、来て欲しいと言われたが、今日はおじいちゃんに無断で出てきてしまった。
きっと、家で怒ってるに違いない。
本当の娘のように可愛がってくれるおじいちゃん……。
帰ったら、謝ろう。
そして、今日あったことを話してみよう。
そしたら、明日、外に出るのを許してくるかもしれない。
家の扉を前に立ち止まり、一つ深呼吸をする。
普段、ニコニコしているおじいちゃんだが、怒るところが想像出来ない。
私は変に緊張しながらも、扉を開いたのだった。
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