63人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいま……」
薄暗い家。
扉を開けると同時に、バタバタッと足音が聞こえ、おじいちゃんが出迎えてくれる。
ただ、その顔は険しく、今にも怒鳴り出しそうだった……。
「マリアッ!」
「ごめんなさい! 勝手に外に出たりして!」
鬼がどんな顔をしてるか知らないが、今のおじいちゃんのようなことを言うのだろう。
一瞬、そんなことを思うと案の定、大きく腕を振り上げた。
私は叩かれると思い、目を固く閉ざし、下唇を噛み締めた。
自分が勝手にやったこと。
許されることではないとわかっていた。
だから、私は叩かれても仕方ないと思ったのだ。
しかし、覚悟を決めた直後、体が振られ、背中からきつく抱きしめられていた。
私の耳元から聞こえる、微かな泣き声。
私は耳を疑ったが、私の右肩が濡れるのを感じるとおじいちゃんが泣いてるのに気がついたのだった。
「おじい……ちゃん?」
「心配したぞぉ! どこに行ったかと思って探し回った! もしかして、また研究所に連れ戻されたのではないかとも不安になった!」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい。外が、おじいちゃんと暮らしてる世界がどんなのなのか知りたくて、それで」
私の言葉の後、更に強く抱きしめられて。
耳元で嗚咽交じりにおじいちゃんが言った言葉に胸が熱くなった。
「もう、どこにも行かないでくれ……!」
血の繋がってもいないはず女の子に言う言葉にしては深みがある感覚……。
家の入り口の前で佇む二人。
私もおじいちゃんも揃って泣いていた。
廊下の木の板に、小さな染みと小さな小石をちりばめながら……。
最初のコメントを投稿しよう!