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初めて外に出てから、四回目の葉緑の季節が訪れた。
私はあれから一度も家を出ることをせず、おじいちゃんの側に居続けた。
ただ、緑の草原や木々を見る度、心にひっかかる物があって……。
川で出逢った漆黒の髪と赤茶色の瞳を持った男性、大輔……。
彼を見てからというもの、頭の隅に彼の存在が在り続けた。
私と同い年か、年上くらいだろうか。
年齢の重ね方が変わっているこの世界では、わかりにくい部分だったが何となくそう思った。
「貴方は今、何しているのかしら……?」
窓に頭の側面を重ね、横目で外を眺めていた。
微かな風に揺れる草花のように、私の心も揺れていたのだ。
外に出たい……。
貴方に逢いたいよ……。
四回目の葉緑の季節を過ぎた貴方の姿はどう変わっているのかしら……。
痩せたかな?
太ったかな?
髪は長くなった?
短くしたのかな?
背は伸びたかな?
私は髪を伸ばしたよ?
毎日すいてたんだよ?
私の髪を見て、貴方は何て言うかな?
笑ってくれるかな?
綺麗って言って欲しいな。
貴方に……っ!
逢いたい……っ!
想いは溢れるのに、届かなくて。
想いが溢れて、涙に変わっていった。
目から落ちてく涙の結晶……。
貴方は私を覚えてますか?
私は貴方を忘れたことはありません。
どうか、私を忘れないでいて欲しい……。
心に駆け巡る言葉達……。
吐き出せない想いに私は声を上げて泣き出してしまっていた……。
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