深々

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『あたしが水だったら良かったのに』 そしたらきっと 貴方がどんなに小さく細かい粉になっても 混ざって 貴方を少しでも取り戻せるのに 貴方がどんなに強固な固体でも あたしの中に取り込んで 貴方の回りを守ってあげられるのに 貴方が決して 私と交わらない油脂でも 貴方に一番近い所で 貴方に触れていられるのに 私は小さな小さな分子の集合体 ただそれだけ 形も 氷(固体) 液体 蒸気 と 簡単に形を変えて 貴方に合う形に 変形出来る "カスタマイズ"が出来る 側にいたい 貴方の必要不可欠になりたいのです と "彼女"は言った それは きっと "海より深い 母の愛"に似た 自らの存在すら 変異させる 献身的な愛情 『貴方に 私の存在を知って戴かなくて結構』 ただ 側にいたい 時に 人体を構成する溶液の7割を 彼女は占めている というのは "彼女=水"が 全ての始まりだからであろう 性別も何もかもを越えて 彼女は 今も 生物の中で 植物の中で 土壌の中で 大気の中で 闇の中で 廻り巡って行く
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