出会い・加藤清正の場合

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「これが宇喜多の戦いなんよ」 またしても心を読んだかのように、弥九郎が言う。そんな弥九郎に、虎之助は少しばかり薄気味悪さを覚えた。 そんな虎之助の内心を知ってか知らずか、弥九郎が言葉を続ける。 「和平の使者にするなら相手に馴染みの深いモンならやりやすい、万一殺されても商人一人死んだだけ。ワイに白羽の矢が立つのは必然なんよ」 その必然が偶然だったなら、幸運だと虎之助思った。 そしてそれはきっと弥九郎も思っているだろうと。 ほな、また、と言い残して馬上の人になる弥九郎と宇喜多の家臣を見送る形で虎之助は暫く陣から立ち去る一行を眺めていたのだが。 「あー、せや、お虎お前な、ワイのことガン見し過ぎやねん、あんまりジロジロ見てっとそのうちケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わすで?」 次会った時、殴ろう、本気で殴ろう黙らせよう。 虎之助は心に固く誓った。
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