プロローグ

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俺は笑いながら古谷に謝り、二階に上がった。 階段を上がりきり、左に曲がって、突き当たりの左側が古谷の部屋だ。 北向きに面しているために、あまり日当たりが良いとは言えないが、風通しは悪くない。 俺は、小学校の頃から何度も入り、慣れてしまった部屋のドアを開ける。 「……?」 何か違和感を感じる。 何だろう…。 「おいタカ。早く入れよ」 俺が入口で考えていると、後ろから古谷がコーラを二本携えて、急かしてきた。 「ああ…悪い」 俺は素直に部屋に入り込んだ。 そして、ようやく違和感の正体が分かった。 「古谷。お前棚にあった漫画本どうした?」 よく見ると、いつも棚に所狭しと入れられていた漫画本が綺麗サッパリ無くなっていた。 それだけではない。 壁に何枚か貼ってあった、ナントカって言うボクシング選手のポスターや、ガラステーブルの上に積んであった大量のCDケースまでもが部屋から姿を消していた。 「ああ…ちょっとな」 古谷は、少し寂しそうに、照れくさそうに笑って誤魔化した。 訳の分からない俺は、更に質問を続ける。 「親父に捨てられたのか?雑念だーッとかって…」 ここまで言って、俺はようやく古谷の真意に気付いた。 「俺、ヅミ高受けてみようと思うんだ…」
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