プロローグ

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その沈黙に耐えられなくなった俺は、軽く笑いながらベッドに近寄った。 「大した決意だな。 …でもコレは捨てなくて良いのか?」 俺はワンダーランド(ベッドの下)を覗き込む。 そこには思春期男子の夢の結晶が積み重なって、不思議な熱気を生み出していた。 「ソイツは無理だろ」 古谷も笑いながらベッドに近づき、その雑念の塊を足で奥に押し込んだ。 「そりゃそうだよな」 俺が笑う。 「そりゃそうさ」 古谷が笑った。 しばらく二人は笑いあって、無意味な世間話を始めた。 古谷も俺も何度も笑った。 楽しかった。 そのはずだったのに。 何故か俺の心は虚無だった。 何なんだよ、一体。 古谷がヅミ高に行こうが俺とは関係ないじゃないか。 俺は一年の時から高校はアオ高で良いと考えていたじゃないか。 ヅミ高に行こうなんて、これっぽっちも思っちゃいなかったはずだ。 大体、俺と古谷は同じ高校で過ごしたいと思う程の親友なのか? 否、ただ気の知れた友達と言う存在だったはずだ。 俺は虚無感を振り払うべく、手にしていたコーラを一気に飲み込んだ。 「あっ、お前それ俺の分も飲んでるじゃねぇか!ふざけんな、返せ!」 古谷が絡んでくる。 俺は構わずコーラを口内に流し込む。 シュワシュワとした刺激が堪らなく痛い。 「返せよ…俺の青春…」 急に古谷が弱々しい言葉を言ってきた。 不思議に思って、コーラを飲むのを止める。 「あのさ、タカ。俺…美帆と別れたんだ」
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