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「420円」
財布を開き……閉じた。
「380円じゃだめ?」
「だめに決まってる」
「カフェオレがなんで420円もするのよっ」
「店長に聞けよっ」
私は財布を鞄にしまい、太郎に笑いかける。
「皿洗いとか、しようか?」
「後片付けは終わってる」
太郎はモップを掃除用具入れにしまう。
「……へえ」
私は絶望的な目で手元のマグカップを見た。お財布には、380円しか入っていなかった。1円が何枚かあったけど、40枚もありそうにない。
「……お前、金が払えないとか」
「明日払いにくるっ」
「飲み逃げかっ」
「逃げてないよ、明日払うって言ってんじゃん」
「開き直るなっ」
私は鞄を肩にかけ、太郎に告げる。
「並木高校数学科2年3組18番、佐伯花子! 明日420円を持ってここに来ます!」
店の奥まで届くような大声。何か言いたげな太郎から目をそらし、店を出た。勢いそのままに、住宅街を走り抜ける。
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