ヤマダタロウの探し方

2/8
2340人が本棚に入れています
本棚に追加
/445ページ
「おっはよーうっ」  いつもと変わらない快活な様子で、教室のドアを開ける。ガタンとドアが悲鳴をあげた。 「花子」  教室にいた生徒からの視線が集まる。林田要も私を見る。ふんっと鼻息荒く、胸を張る。まだまだ痛む胸なんて無視っ。佐伯花子は、もう泣かないんだから。 「邪魔だ」  ぱこん、背後から頭を叩かれる。 「せんせー……おはっ」  片手をあげて、ヒゲ面の冴えない担任に笑いかけた。 「佐伯、席に着かないと遅刻扱いだ」 「はーい」  両手をうしろにまわし、のんびり席に向かう。「HRを始める」、先生のかったるそうな声が追っかけてきた。 「花子、おはよ」 「おはよ」  数学科には、女子が圧倒的に少ない。その数少ない女子、あかりとあいさつを交わし席についた。  いつもはなんとなく過ごしていたけれど、今日の私にはミッションがある。ヤマダタロウは何年何組にいるのか! 早く休み時間にならないかなあと、想像をふくらませていた。
/445ページ

最初のコメントを投稿しよう!