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「おっはよーうっ」
いつもと変わらない快活な様子で、教室のドアを開ける。ガタンとドアが悲鳴をあげた。
「花子」
教室にいた生徒からの視線が集まる。林田要も私を見る。ふんっと鼻息荒く、胸を張る。まだまだ痛む胸なんて無視っ。佐伯花子は、もう泣かないんだから。
「邪魔だ」
ぱこん、背後から頭を叩かれる。
「せんせー……おはっ」
片手をあげて、ヒゲ面の冴えない担任に笑いかけた。
「佐伯、席に着かないと遅刻扱いだ」
「はーい」
両手をうしろにまわし、のんびり席に向かう。「HRを始める」、先生のかったるそうな声が追っかけてきた。
「花子、おはよ」
「おはよ」
数学科には、女子が圧倒的に少ない。その数少ない女子、あかりとあいさつを交わし席についた。
いつもはなんとなく過ごしていたけれど、今日の私にはミッションがある。ヤマダタロウは何年何組にいるのか! 早く休み時間にならないかなあと、想像をふくらませていた。
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