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一週間後。
「……いない」
私は頭を抱え、座り込む。この一週間、生徒にも先生にも聞き込みをした。普通科へも足を伸ばしたというのに……ヤマダタロウは見つからない。
「なんてことだー」
放課後の誰もいない教室。ベランダに出て、だらりと腕を投げ出した。
――あのカフェにも、たどり着けないのに。
泣きじゃくってふらふら歩いたせいで、普段とは違う道に入りこんだらしかった。あれから今まで、カフェに行けたためしはない。なぜカフェから家へ帰れたのは不明だけど、気づいたら知ってる道に出れたのだ。
「飲み逃げ犯になっちゃう」
どうにかして、見つけなきゃなあ。はあっと盛大なため息をつく。ぼーっと夕焼けを眺めていると、ガチャンと嫌な音がした。慌てて引き戸を見る。最悪なことに、引き戸の鍵がしめられていた。
「……とっち!」
教室には悪ふざけばっかりする、水樹通(みずきとおる)の姿。へらへら悪びれる様子もなく手を振っている。
「あけろっ」
怒って引き戸をガタガタ揺らす。おー怖い、とっちは自分を抱きしめて、にやにや笑う。
「……さいあくだ」
ぎりりと歯を食いしばった。とっちは私に背を向け、さよならと口パクする。あいつは本当に、締め出したまま帰る。自分さえ面白ければいいのだ。
「百倍返しだ」
そう言ってあかんべーをするけれど、すでにとっちはいなかった。
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