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もういいや。諦めてベランダからグラウンドを見る。そのうち、見回りの先生か警備のおじさんがきてくれるはずだ!
肌寒い風が、火照った頬を撫でる。
――あの日のことは夢だったのかな。
あんなにおいしいカフェオレは初めて飲んだ。ほっとする味。注文した通り涙は引っ込んだ。あの店に行けたら、傷ついた心も癒やしてもらえそうな気がしたのに。
「はあ」
きれいな夕焼け。明日は晴れに違いない。
――もう見つからないのかなあ。
これからテスト期間が始まる。苦手な現文・古文の勉強を一夜漬けしなければいけない。カフェやヤマダタロウを探すのは、潮時なのかも。
「寒くなってきた」
カフェオレが飲みたいなあ。ふっと何となく、窓越しに教室を見た。
「……あ」
人が通る。普通科の制服。ガタガタ。窓を揺らし、助けを求める。生徒は気づいたらしく、教室に入ってきてくれた。必死にボディランゲージ。ああ、と気づいてくれた彼は、ポケットに手をつっこんだまま鍵を開けてくれた。
「ありがとう!」
鼻水をすすり、にぱっと笑いかける。男は「あ」と口を大きく開けた。見たことある顔……、私も彼を凝視する。
「見つけた!」
私は指をさして叫んだ。
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