ヤマダタロウの探し方

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 ガターン! 開けた引き戸が閉められる。 「ぎゃー!」  ヤマダタロウは引き戸を閉めて、開かないように必死に押さえている。せっかく開いたのに、なぜっ! 「お前なんか知らない」 「ちょっと、マジで寒いんだけど!」  ガタガタ、ガタガタ。ヤマダタロウは鍵をしめようとさえする。鬼畜! 「私は獣か!」  ぶえっくしょん! ガラス戸に唾が飛んだ。うう、震えてきた。揺らす元気すらもう……ない。ふっと膝が落ちた。ゴツン。ガラスに頭がぶつかる。 「わ、」  必死に閉めようとしていたヤマダタロウは、引き戸を引く。ガツン。額が擦れる。 ――優しくしてくれ。  赤くなった額に手を当て……記憶を手放した。
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