2340人が本棚に入れています
本棚に追加
/445ページ
「……ひっ、く」
止まらない嗚咽。
「ぐぞー……」
ちゃんとしゃべれないほどの鼻声。
「バカヤロー」
涙を拭いつぶやく。私はついさっき、大好きな人に振られた。いや、大好きだった人に。
――もっと断り方があるでしょうがっ!
胸の痛みとともに悔しさがこみ上げて、涙が止まらない。いま、世界で一番不幸なのは……私だ。
とぼとぼと歩いていると、立て看板をしまおうとしている小さなカフェが目に入った。夕方とは言え、5時にもなっていないのに。もう閉店作業? ちょっと待ってよ。
私はドスドスと、早歩きで立て看板の前に立つ。黒い制服に身を包んだ店員の不審な目。視線が痛くてうつむく。私がこんなにつらい思いをしてるのだから、少しくらい……ワガママを言いたい。
「……ください」
「は?」
「涙の止まる飲み物ください!」
私はあらゆる汁を流しながら、半ばヤケになって叫んだ。
最初のコメントを投稿しよう!