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「終わったあっ」
夕方、テスト終わりの気楽な帰り道。私は両手を挙げ伸びをする。ボキボキ、運動不足の体はあらゆる音を出す。
「はーなーちゃん」
からかい口調の、軽い物言い。呼ばれて振り返る。
「とっち」
愉快そうなとっちがいた。毎日毎日、なにがそんなに楽しいのか、ふざけていないとっちを見たことは一度もない。
「この間はよくも」
とっちに飛びかかる。
「キャーッ」
女の子みたいな叫び声を上げる。私はとっちを抱きしめた。
「みんな見ている」
「くるしゅうない、くるしゅうないぞよ」
「殿か」
ぎゅうっと抱きしめてから、解放した。とっちはヘラヘラ笑っている。公衆の面前での仕返し。とっちと私、両方にダメージがあるので改良の余地あり。
とっちは奇怪な人物だけど美形なのでファンが多い。私が抱きついたことによる「ファン減少」は否めないだろう。加えて……私への悪口も増えるだろう。ま、しょうがないねっ。
とっちはパーマがかった猫っ毛をくるくるいじる。
「なにかおごれ」
私の横に立ち、言う。
「いやだ」
即答し、乱れた制服を直した。
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