ライオンの扱い方

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 コツコツ、足取りは軽く、あの店へ向かう。とっちはつまらなくなったのか、今度は夕焼け空に手を伸ばしていた。  私には「この人」という友達がいない。ふらふら、いろんな人と仲がいいと思う。特定の人とつるみたいと思うのだけど、つるめないのだ。好きなときに好きな人と好きなように話したい。 ――修学旅行が目下の悩みだ。  ホテルは数学科の女子はみんなで一室と決められているからいい。でも、行動グループをどうしよう。今は秋、旅行は春休み。まだ時間はあるのに、みんなグループだのなんだの話し合ってる。私はうまく入れない。何グループかに誘われたけど、選べないでいるのだ。秋空を見ていると、今考えなくてもいいことが頭をよぎる。 「とっち」  見とれるほどに透き通る肌。色素の薄い髪。ビー玉みたいな目をした彼を見上げる。 「付き合って」 「うむっ」  奇人はにっと白い歯を見せた。
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