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冷たい風が襟を立てる。通は口を引き締め革靴を鳴らす。異国の雰囲気を漂わせ、通の歩いた後には自然と人が立ち止まる。
長いまつげをしばたいた。無表情も、まるでフランス人形のように美しい。
通は高層マンションのドアをくぐった。慣れた手つきでロックを解除し、最上階へエレベーターで上がる。
部屋のドアを開け中に入ると、ジャケットを放り投げ白いソファーに沈んだ。
「はあ」
背もたれに両腕を広げ、足を組む。窓から景色を見る。もう飽きた。ガシ、頭を乱暴に掻いた。
――面白くない。
「ココア」
ガランとした室内に叫ぶ。もちろん誰からの返事もない。
――全く面白くない。
通は息を吐きながら目をつむった。
「エリマキトカゲ」
まぶたの裏に浮かぶのは、エリマキトカゲみたいな男に花子が抱かれていたこと。ムカついて、目を開ける。目を開けていれば光景をありありと思い出さずに済む。しばらく続けたら、目が乾いて痛くなった。
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