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真っ黒の瞳が忌々しそうに私を見る。ツンツンの剛毛な黒髪、少し灼けた肌、意志の強そうな眉毛……まんまるの瞳。見たことあるかなあ? 首を傾げる。
「何年生?」
「知るかっ」
太郎はガシガシ、モップをかけていた腕を動かす。ネームプレートには「ヤマダ」と書かれていた。やまだたろう、知らないなあ。
「早く帰れよ」
太郎は吐き捨てるように言う。私は唇を噛み締めた。本当に意地悪。
「林田要」
「は?」
「林田要を知ってる?」
「なんだよ、お前は本当に急だな」
「そいつ、私が好きだった人」
こんなこと言ったところで意味がないのはわかってる。でも誰かに知っていて欲しかった。
「高校入ってから今日までの二年間、片思いしてたの」
太郎は何も言わず、机の上に椅子を乗せる。
「私は、本当に……好きだった」
涙よ止まれ! もう流してたまるかと歯を食いしばる。鼻がツーンとした。
「聞いてくれてありがとう!」
カフェオレの残りを吸うように飲み、鞄を手にする。
「いくら?」
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