出会い

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第三話 「今日未明。 東京都の沢田雄馬(17)さんが変則的な死を遂げているのが見つかりました。」 物騒な世の中だな……。 浩介は思う。 いつも思う。 殺し合いの無い世の中なら良いのにと。 そうだ……この力で殺人を未然に防げば良いんだ。 そうすれば俺は一躍有名人、今まで以上に金だって入る。 自分の力を人のために使って更に金まで入る。 良いことばかりじゃないか。 俺は思った。 そして俺は街に繰り出した。 他愛もない考えが行き交っている。 まさか、俺に心を読まれてるなんて知る由もないだろう。 だからこそ愉快だ。だからこそ笑いが止まらない。 人の考えが手に取るように分かるってのはこれほどまでに素晴らしい事だなんて今まで予想だにしなかった。 男がお婆さんに向かって走っている。 全てお見通しだ。 俺はその男に体当たりした。 警察が駆け寄る。 勿論逃げられはしない。 どうやって逃げるかも分かっているからすぐに捕まえられる。 殴りかかって来たって、当たらない。 そうして簡単に捕まえてしまう。 今では暴走族だって怖くない。 もう俺は有名人なんだ。 それから……テレビの出演依頼が殺到し……俺の人生は一変した。 俺は幸せを掴んだんだ。 いつの間にか俺は力を得た理由を忘れていた。 もはやどうでも良かった。 たとえ、どんな方法でこうなったとしても今幸せなのには変わりないのだから。
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