3134人が本棚に入れています
本棚に追加
/178ページ
「謐サン、家に帰りたい」
「淋しいから一緒にドイツ行こう?」
外の景色は、家並みがだんだんと間隔が開いていき、国道の標識に飛行機マークが見えた。
話が噛み合ってない・・・・。
「・・・・」
「この人達は借りてきたんだ。愛人のヤクザから」
「あ、愛人!?」
ぽっかーん。
謐サン、貴方は家を出てから何があったんですか・・・・。
ルックス良いし、恋人の一人や二人いてもおかしくないけどさ。
いや、この人が笑うだけで相手が落ちるであろう威力はあると思うけど。
「驚いた?軽蔑する?」
「・・・・いや、っていうか、苦しくない?」
「・・・・・・優しいなあ、日本から連れ去ろうとしているのに。それでも心配してくれるの?」
「それは困る。学校はサボれないッ」
「・・・・雪成もいるから?」
「それは」
雪成との関係を知ってるのか・・・・。
「煉が大人になるのを俺はずーっと待っていたのに。まさか雪成に持っていかれるなんてね」
自嘲気味に笑い、青い瞳からまた何も読み取れなくなった。
謐サンは・・・・。
俺の事を好きだったのか。
「謐サン、ドイツには一緒に行けないよ・・・・夏休みに入ったら行くから」
「俺はね、煉が好きなんだよ。帰国した夜、煉の家の前で雪成と手を繋いでいるのを見たときは、ショックで・・・・」
「・・・・雪成以外とは付き合えない」
「そう言うと思ったよ。だから・・・・」
「んんッ!?」
一瞬だった。
ハンカチを口に押さえられて、俺は気を失った。
「ごめんね、煉。でもどうしても欲しいんだ、君が」
最初のコメントを投稿しよう!