さよならの形

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幼稚園から帰って服を着替えた。 携帯を開きサイトにアクセスした。 田辺さんとの連絡には、サイト内のメール機能を使っている。 『今日は楽しかった。 またゆっくりできたらいい… いや、絶対また会いたい。 会ってください』 田辺さんからのメールが届いていた。 サイトで使っているアバターの顔が赤く照れている。 『ありがとう。 楽しかったデス。ぜひまた…』 私も赤い顔にして送った。 さぁ、晩ご飯の支度をしないと。 今日は夫の帰りも早い。 近頃は不景気のあおりを受けて、夫の会社も残業が減ってしまった。 暇つぶしくらいに始めたアルバイトが、今ではいい収入元になっている。 ピンポーン! 玄関のチャイムがなる。 夫が帰ってきたのだ。 「おかえりなさい」 私は料理の手を休め、夫を迎えた。 「おい!ちょっと来い」 「え?何?まだご飯の支度が…」 「いいから来い!」 いつもと違う夫の様子に、私はドキリとした。 何かバレた? そんなわけはない。 リビングに移動した夫の手には、書類のようなものが握られていた。
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