序章 暗黒の逃亡者

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 夜は暗いというのは常識的なことであるが、実の所月明かりや星明かりさえあれば真の闇とはなりえない。  真の闇が訪れるのは夜であり、なおかつ今にも雨を招きそうな分厚い雲が月明かりや星明かりを妨げる夜だけである。  真の闇は人の心を不安にさせる。  もしかしたら数m先、もしくは手の届く距離に得たいが知れず、自分の手に負えない存在があるのではないか。  そんな空想を頭の中に浮かべずにはいられない。だからこそ、よほどの楽天家でもない限り、真の闇の中では心の安定を得ることはできない。
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