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「貴方誰よ」
「えっ」
ぼうっとしていたところに声をかけられて、驚いた。
いつの間にか、ぼくより少し年上の女の子が背後に立っている。
髪は薄いピンクがかったブロンドだが、勝ち気そうな漆黒の瞳がどこかすみれに似ていた。
「ぼくはノナ‥‥」
「は? モナカ? はっきり言いなさい」
「ノナ。アンドロイドなんだ」
「ふぅん‥‥よくできてるわね」
彼女は試すようにぼくを眺める。
この手の(パパへの)称賛にはありがとうと答えるのが普通だけれど、彼女の言葉には返答の余地がない。
ぼくの人型を、全くの出力装置としてしか見ていないのだ。
「それはそうと‥‥貴方邪魔なのよ、ドアの前に突っ立って」
「ご、ごめんなさい」
慌ててドアの前からどくと、女の子はぼくを押しのけるように勢いよくドアを開ける。
――ぼくが閉めたドアを。
制止する間も、なかった。
「すみれ! 迎えに来てやったわよ」
まるで声の銃弾。
「いつまでもうじうじしてないで、金谷家に来なさい」
守られてきた静謐を踏み外して、空間さえ揺らぐ。
「私だけでも、歓迎するわ」
またフリーズしていたぼくは、そこではっとして部屋を覗く。
「ほら、何とか返事なさいよ」
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