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「うん‥‥」
ぼくは電子回路で動くアンドロイドだけれど、ヒトの気持ちがわかる。
といっても心が読めるわけではなく、ヒトと同じような擬似感情を生む回路を持っているだけ。
だから、経験したことのない感情を正しく想像することはできない。
「ぼくはすみれを傷つけてしまうかもしれない」
ぼくが今ほどたくさんの感情を知らなかったとき、ぼくはしばしば感情を誤解して、周りのヒトの気分を害した。
そういうとき、相手の感情は初めからひどいマイナスのことが多かった。
――パパとママが死ぬのは、どれくらいのマイナスだろう。
「大丈夫だよ、ノナ」
パパは腕を伸ばして、ベッドの横にあるカーテンを引く。
眩しい陽が、惜し気もなくぼくらの上に降り注ぐ。
「ヒトにだってすみれの気持ちはわからないのだから、お前の思ったように行動すればいい」
それに、心には不確実性も必要だ、とパパは言う。
「大切なのは誠意だよ」
「うん‥‥わかった!」
実はすみれに会うのが、ちょっと楽しみでもある。
眼もすっかり覚めて、きっとうまくできると思えた。
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