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四階にあるぼくの部屋の窓からは、研究所に来る自動車がよく見える。
普段は朝夕以外ほとんど出入りがないので、すみれが乗ってきたらしい車はすぐにわかった。
昼下がりに一台だけ来た、飾り気のない、シルバーの小さな車体。ぴたりと玄関に着けてあるので、すみれの姿は確認できなかった。
それからすぐに、内線が鳴る。
「ノナ、すみれが来たから応接室まで来なさい」
パパの声は気持ち緊張している。それとも、ぼくが緊張しているからそう聞こえるのだろうか。
応接室の前に着くと、いきなり扉が開いて、知らない男の人と女の人が出て来た。
ぼくは思わず二、三歩後ろに下がる。
本当はあいさつしなければいけないのに、声が出てこない。
「引き取るしかないんだろう?」
「ええ……でも、前はあんな子じゃなかったのに」
――二人は、ひどいマイナスの感情をあらわにしていた。
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