ココニイルコト

6/6
前へ
/6ページ
次へ
 男は一つため息をついて、喋りだした。 「まあ、そう急かすなよ。君の親父さんから、君に伝言を頼まれててね」 伝言……? どうして、 「どうして、父を殺したっていうあなたが、伝言を頼まれるんですか?」 男はじっと僕を見つめる。 「そーゆう、鋭い、というか頭の回転が速いとこ。あいつそっくりだな」 答えを急ぎすぎるとこもな。 そんな風にぼやいてお茶に口をつける。 男の口調は、僕を刺激する。 いらつく。 「父は死んだんですよね?」 「死んだよ。俺が、殺した」 目も合わせずに男は言う。 そうか、僕の父は、死んだのか……。 それは何度聞いても現実感が湧かない言葉だった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加