はじまり

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「笑い事じゃないっすよ…」 「ゴメン ゴメン でも 弘幸君がそんなに慌ててるなんて よっぽどだったんだね」 涙目になりながら お茶を淹れてくれたのは 得意先の社長の奥さん 礼子さんだ 俺はあの腕を見た後 死に物狂いで体を動かし なんとか腕をふりほどくと そのまま車を走らせ 一番近い得意先に駆け込んだ 「すみません いきなりこんな話しても わけわかんないですよね」 「まぁ 弘幸君の話は 割といつもわけわかんないからね 大丈夫よ」 お茶を手渡しながら 礼子さんが微笑む 「すいません…」 なんだか心底恥ずかしくなり うつむいてお茶を受け取った 「それってさ どっかで霊を拾っちゃったって事なのかな?」 「えっ!?」 思いもよらない言葉に 俺はお茶を落としそうになった 「だって いきなりなんでしょ?今までそんな事 なかったんでしょ?」 その言葉で 今朝のホームでの出来事を思い出し 背筋にゾッと冷たいものが走った 「えぇ まぁ」 「じゃあ やっぱり どっかで拾っちゃったんだよ!」 「…どうしたら いいんでしょうね?」 「ん~私の知り合いで そういうのに詳しい子がいるから 会ってみる?」 正直 その手の人間はあまり信用していない だが 今朝の駅の女といい さっきの車での出来事といい 不可解な事が立て続けに起こり過ぎたせいか 「はい お願いします」 俺はすんなり返事をしていた
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