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北村春樹がため息をつくのも無理はない。入社してから、のらりくらりと仕事をこなしてきた北村に、このところ顧客の死が相次いで対応に追われているからだ。
北村は特別、この仕事が好きでもないが嫌いでもない。ただ五時に仕事が終わってくれればそれで良いのだ。
「先輩。またっすか? 大変ですねぇ。今度は何んすか?」
向かいのデスクから冷やかし半分に声を掛けてきたのは北村の後輩の坂下である。
「ああ…ったく、最近俺に集中してるから参るよ……今度は心筋梗塞だってよ。」
「そうなんすかぁ……まぁ、長い事この仕事をやっていれば先輩みたいな暇な人でもこんな事はありますって。」
「いちいち引っ掛かるな。まぁ、そのうち落ち着くだろ。」
基本、能天気な北村にはこれから起きる不可解な出来事を察知できる筈はなかった。
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