危険な好奇心

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帰り間際に淳の叔母さんが俺達の後を追い掛けて来て、 『淳、クラスでイジメにでも会っているの?』 と不安げな顔で聞いて来た。 俺達は否定したが、本当の理由を言えないことに少し罪悪感を感じた。 それから三日後、 その日は珍しく内藤と佐々木と俺と慎の四人で一緒に下校した。 内藤は体がデカく、佐々木はチビ。実写版のジャイアンとスネオみたいな奴ら。 もう俺と慎の中で『中年女』の事は風化しつつあった。学校で噂の『トレンチコート女』も実在したとしても、全くの別人と思えて来ていた。 その日は四人で駅前にガチャガチャをしに行こうと言う話になり、いつもと違う道を歩いていた。 これが間違いだった。 楽しく四人で話しながら歩いていると、佐々木が 『あ、あれトレンチコート女ぢゃね?』 内藤『うわっ!ホンマや!きもっ!』 と言い出した。 俺はトレンチコート女を見てみた。心の中で《別人であってくれ!》と願った。 トレンチコート女はスーパーの袋を片手に持ち、まだ残暑の残るアスファルトの道で、ただ、突っ立っていた。うつむいて表情は全く解らない。 慎は警戒しているのか、小声で俺達に 『目、合わせるなよ!』 と言ってきた。 少しずつ、女との距離が縮まっていく。緊張が走った。女は微動たりせず、ただ、うつむいていた。 女との距離が5㍍程になったとき、女は突然顔を上げ、俺達四人の顔を見つめてきた。そして、その次に俺達の胸元に目線を送って来ているのが解った。 !名札を確認している。
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