危険な好奇心

25/67
前へ
/67ページ
次へ
     違和感 いつもなら秘密基地の屋根が見える位置にいるはずなのだが、屋根が見えない。 慎もすぐに気付いたようだ。 このとき脳裏に『中年女』がよぎった。 胸騒ぎがする。 鼓動が激しくなる。 慎が 『裏道から行こう。』 と言った。俺は無言で頷いた。 裏道とは獣道を通って秘密基地に行く従来のルートとは別に、茂みの中をくぐりながら秘密基地の裏側に到達するルートの事である。 この道は万が一秘密基地に敵が襲って来た時の為に造っておいた道。 もちろん、遊びで造っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは・・ この道なら万が一、基地に『中年女』がいても見つかる可能性は極めて低い。 俺と慎は四つん這いになり、茂みの中のトンネルを少しずつ進んだ。 そして秘密基地の裏側約5㍍程の位置にさしかかった時、基地の異変の理由が解った。 バラバラに壊されている。 俺達が造り上げた秘密基地はただの材木になっていた。 しばらく様子を伺ったが、中年女の気配もないので俺達は茂みから抜けだし、秘密基地『跡地』に到達した。 俺達はバラバラに崩壊された秘密基地を見、少し泣きそうになった。 『秘密基地』言わば俺達三人と2匹のもう一つの家。 バラバラになった材木の片隅に大きな石が落ちていた。恐らく誰かがこれをぶつけて壊したのだろう。 『誰かが』?・・いや、多分『中年女』が。。 慎が無言で写真を撮りだした。 そして数枚の材木をめくり、『淳呪殺』と彫られた板を表にし、写真を撮った。 その時、わずかな板の隙間からハエが飛び出し、その隙間からタッチの遺体が見えた。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

644人が本棚に入れています
本棚に追加