危険な好奇心

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女は歯を食いしばり、見せ付けるように歯軋りをしながら 『ンッ~ッ』 と何とも形容しがたい声を出しながら、俺の胸を踏んでいる足を左右にグリグリと動かした。 痛みは無かった。 もう恐怖で痛みは感じなかった。 女は小刻みに震えているのが解った。 恐らく興奮の絶頂なんだろう。 俺は女から目が離せなかった。 離した瞬間、頭を金づちで殴られると思った。 そんな状況でも、いや、そんな状況だったからだろうか、女の顔はハッキリと覚えている。 年齢は40ぐらいだろうか、少し痩せた顔立ち、目を剥き、少し受け口気味に歯を食いしばり、小刻みに震えながら俺を見下す。 俺にとってはその状況が 10分? 20分? 全く覚えてない。 女が俺の事を踏み付けながら、背を曲げ、顔を少しずつ近づけて来た、その時、タッチが女の背中に乗り掛かった。 女は一瞬焦り、俺を押さえていた足を踏み外し、よろめいた。 そこにハッピーも走って来て、女にジャレついた。 恐らく、2匹は俺達が普段遊んでいるから人間に警戒心が無いのだろう。 俺はそのすきに慌てて起きて走りだした。 『早く!早く!』と離れたところから慎と淳がこちらを懐中電灯で照らしていた。 俺は明かりに向かい走った。 『ドスっ』 後ろで鈍い音がした。 俺には振り返る余裕も無く走り続けた。
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