鬼瓦 花梨

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引っ張り出したちゃぶ台を挟んで、二人は対面する形に座る。 正座をする少女と相対して、晋一郎は片膝を立てた妙な体勢で座っている。 (ま、何されるか分かったもんじゃねえからな。これでいつでも動けるさ) 未だ警戒を解かない晋一郎。 しばらく沈黙が続いたが、最初に動いたのは少女だった。 すっと身体をずらして深々と頭を下げる。 「まず、昨夜の無礼の数々について謝罪したい。誠に申し訳ない。自分でも情けないとは思っている。まさか…あ、いや済まない。言い訳とは見苦しいな。如何なる罰でも受けよう。何なりと申し出てくれ」 「何なりと…って言われてもなぁ」 昨夜とは打って変わって冷静な少女だ。 文句の一つでも言うつもりだった晋一郎にとってこれ程潔いと逆にやり辛かった。 「と、とりあえず自己紹介でもしないか? 互いの名前も知らなかったら何か気持ち悪いだろう」 「む。それもそうだな。いやはや全く気が利かなくて申し訳ない」 コホンと咳払いして、少女は恭しく一礼する。 「私はヨシノだ。差し障りがなければヨシノとでも呼んでくれ」 「俺は若菜 晋一郎。よろしく」 「む。こちらこそよろしくだぞ晋一郎」 「ああ。あ、そういえば…」 「へ?」 晋一郎は身を乗り出して、ヨシノの額に手を伸ばす。 「きゅ、急にどうした晋一郎。私の額がどうかしたのか」 「いや、元気みたいだから熱もマシになったと思ったんだが」 「だが?」 「俺の見立てではあんたの熱は四十度は軽くあった。が、今のあんたは平熱すぎる」 「ああそのことか。こちらの菌に蝕まれたところで痛手ではないよ。数時間もあれば完全に死滅出来るさ」 自分の胸に手を当て、ヨシノは頷く。
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